研究実績の概要 |
本研究では,主に情動機能と前頭葉機能に着目し,メタ記憶に及ぼす要因についての検討,メタ記憶の個人差に関する神経基盤の解明を主な目的としている。これまで,パーキンソン病患者を対象として研究をすすめてきたが,パーキンソン病患者に関しては,メタ記憶以前に神経心理機能の特徴など未解明な部分が多い。そこで本年度は,メタ記憶そのものの研究では無いものの,メタ記憶について検討するうえで重要な神経心理機能について研究を行った。
結果,パーキンソン病患者では検査した全ての認知領域で神経心理機能に低下がみられ,特に遂行機能および処理速度の低下が著しいこと,パーキンソン病患者では,手段的自立,知的活動,新機器利用,情報収集,社会参加といった日常における高次な生活機能が低下すること,そして,これら高次生活機能の低下には神経心理機能障害,なかでも遂行機能障害が強く関連することなどが明らかとなった。
本研究は,高齢のPD患者の神経心理機能や高次生活機能の特徴,およびこれら両者の関連性を明らかにした点で新規性があり,また,高次生活機能を維持し低下を防ぐためには,神経心理機能をターゲットとした認知トレーニング,社会参加や知的活動を促す教育的アプローチといった心理学的な介入が有用であることを示唆した点で臨床的発展性も期待できる。
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