研究概要 |
通常得られる離散・連続データなどを一般化し, 「関数」として捉えてデータ解析を行う関数データ解析は, 工学及び生物学などの分野で広く利用されている. 一方, 行動・社会科学では, 多くの要因を含んだ複雑なデータを扱う場合が多く, 関数データ解析が利用されることは稀である. そこで, 本研究では, 行動・社会科学における関数データ解析の利用に係る種々の問題を解決し, データ解析手法の発展に寄与することを目的としている. 具体的には, 非線形な現象捉えるための関数データ解析手法の開発(研究A)及び関数データにおける欠測値問題の理論的な整備・解析手法の開発(研究B)の2つの研究から構成される. 以下、研究ごとに報告する。 研究A : 関数データのクラスタリングを行うとともに、クラスター構造が存在する部分空間を推定できる方法として、FPCK法およびFFKM法を平成24年度の研究として開発していた。この2つの方法は、データの構造に性能が依存し、常に良い結果をもたらすことはできない。そこで、上記の二つの方法を包含する、一般的なモデルを開発し、多くの場合に最適なクラスタリングが可能であることを、数値実験および実データ解析により示した。上記の結果をまとめ、国際雑誌に投稿中である。 研究B : 関数データの欠測については、全くデータが観測されなかった場合と、部分的にデータが観測された場合の2種類が考えられる。まずは前者の場合について、関数データにおける欠測メカニズムを定義し、標本平均関数、標本共分散作用素、およびその固有値・固有関数といった基本的な統計量の一致推定量を与えた。また、目的変数が実数値で説明変数が関数である場合の関数回帰分析モデルについて、説明変数に欠測が生じる場合の回帰作用素の一致推定量を与えた。本研究内容について、国内の因果推論・欠測データ解析のシンポジウムにて発表を行った。
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