研究概要 |
本研究における研究実施状況については、以下の3点にまとめられる。 1 〈商人=パラサイト〉説の是非をめぐる経済学してき論争と反ユダヤ主義の関係 昨年フランクフルト大学図書館で発見した雑誌資料の詳細な検討を、大塚史学の生産優位主義と比較しながら行い、研究発表した。ブレンターノはリカードの比較優位論に基づきく商人=パラサイト〉説を否定した。ゾンバルトは剰余価値の源泉を独立生産者の生産物と労働者階級のそれに求め、ブレンターノの単純な商業資本主義論を批判した。大塚は〈商人=パラサイト〉説を全面的に支持した。三者の議論はドイツでのユダヤ法理解の経済学史的背景にく商人=パラサイト〉説の問題があったことを示している。 2 ユダヤ法論をめぐる稀覯文献の発掘 北海道大学図書館において、ゾンバルトが近代的有価証券のユダヤ法起源説の根拠とした文献を発見した。これは「他所者」迫害と財産隠匿との関係に着目するゾンバルトの資本主義観を精密に解明する上でも重要な資料である。Stracca, Benvenuto, De mercatura, cambiis, sponsionibus, creditoribus, fidejussoribus, debitoribus, decoctoribus, navibus, navigatione, assecurationibus, subhhastationibus, aliisque mercatorum negotiis, rebusque ad mercaturam pertinentibus, decisiones & tractatus varii. Ad quorurn calcem nunc accessere ejusdem Benevenuti Stracchee de assecurationibus, proxenetis, atque proxeneticis, tractatus duo, Apud Joannem Schipper, J. F., 1668-1669, Novâ hac editione... 3 ドイツのユダヤ系知識人の系譜とナチズム 本研究テーマの外延をなす、反ユダヤ主義の高揚と「正義」の無制限化との関係について、ナチス期に亡命したユダヤ系知識人であるシュテファン・ツヴァイクとエーリヒ・フロムのカルヴァン像およびルター像について検討した。熱狂的な排外主義と規律化への臣従についての社会学的考察は、2.で述べたゾンバルトの議論を理解するうえで重要かつ有益である。
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