研究概要 |
採用2年目の昨年度, 引き続きアメリカのメリーランド大学のPartha Lahiri教授との共同研究に取り組み, 各地域の特性値に対する有効な経験的最良線形不偏予測量EBLUPに関する以下3つの研究を論文として発麦した. ①EBLUPで用いられる地域差異を表す変量効果の分散がゼロに推定されてしまうことが多い問題に対して, 尤度関数にある調整項を付け加えた方法によって, 分散推定値がゼロになることを防ぐ推定法がすでに提案されている. しかしながら, これらの推定量を代入したEBLUPの精度は従来のEBLUPと比較して大幅に悪くなることが指摘されており, 実用的でない, そこで, 特徴的な関数を用いた調整項を提案した結果, 分散が0になることを防ぎ, かつ, 従来のEBLUPの精度を保つことが可能となった. それだけでなく, 提案したEBLUPのMSE(予測誤差を測る基準であり, 非負性を持つ)に対する2次漸近不偏推定量の非負性も示した. これらの業績がJournal of multivariate analysisで採択された. ②各地域の特性値に対する信頼区間の構成に対して, EBLUPの利用が有効であることが知られている. その中でも, 経験的に精度が高いとされているBootstrap法の使用が推奨されているが, より計算量が少なく扱いやすい手法が望まれる場合も多い. そのため, 精度がBootstrap法と同等で, 計算量がより少なくユーザーにとって扱いやすい信頼区間を構築するために, 調整尤度関数を利用する方法を提案し, そこで用いられる分散推定量の漸近的性質も導出した. この結果, 研究論文がAnnals of Statisticsで採択された. ③信頼区間構築の立場において, 従来推奨されているEBLUPに対して推奨できる一種類のBootstrap法を数値比較によって導いた研究論文がCommunication in Statistics-simulation and eomputationにて採択を受けた. また, 別件でEBLUPのMSEに対する2次漸近不偏推定量に関する共同研究も進めており, 現在投稿準備中である.
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