研究概要 |
ガスベンチと質量分析装置を用いた, ハイドロキシアパタイトの炭素・酸素同位体比測定のための技術開発を行った。まず, この装置を用いた時, リン酸との反応温度によって炭酸塩と歯のエナメル質の酸素同位体比がどのように変化するのかについて検討した。その結果, 反応温度を上げるに従って, 酸素同位体比は下がっていくことが明らかとなった。さらに炭素・酸素同位体比の標準物質を作成し, 国際標準物質を規準とした同位体比の値付けを行った。この内容について論文を執筆し, Rapid Communication in Mass Spectrometryに投稿して受理された。 さらに, 縄文時代人骨の歯のエナメル質の炭素同位体分析を行い, 東海地域と山陽地域の人骨について分析を行った。その結果, 縄文時代人は子ども期に, エネルギー源の大部分をC3植物と陸上哺乳類に依存しており, 海産資源に依存する割合は低いことが明らかとなった。これは, タンパク質源の値を主に反映する骨コラーゲンの炭素・窒素安定同位体分析では分からなかった画期的な成果である。この研究内容を, 国立科学博物館において行われた日本人類学会において発表した。 また國府・伊川津人骨の放射性炭素年代測定を行った。その結果, 今まで帰属年代が不確かだった人骨の年代が明らかとなった。特に, 國府人骨の帰属年代は, 副葬品と骨形態から縄文時代前期と後期に分かれるとされていたが, 実際に骨コラーゲンの放射性炭素年代測定を行うことで, 人骨の帰属年代を確認することができた。この研究内容については, データ解析を行っている最中である。 以上のように, 平成25年度は, おおむね研究計画どおりに研究を進め, 特別研究員(PD)における2年目の研究計画を着実に実施することができた。特別研究員を辞退するため, 平成25年度末が研究の最終年度となる。未だ出版していない研究については, 早急にまとめて論文を出版する必要がある。
|