研究課題
特別研究員奨励費
“自分がいつ・どこで・何を経験したか”という情報(エピソード記憶)は,アイデンティティから適応的行動に至るまで,幅広く生体を支えている。そのため,エピソード記憶については現在まで数多くの研究が為されており,その形成過程については明らかになってきた点も多い。だが,エピソード記憶が意識に上るまでの過程(検索過程)については不明な点も多く,心理学・認知科学では“思い出せるか否かは,思い出すべき情報(ターゲット)とその手がかりとなる情報(検索手がかり)の連合の強さにより規定される”と考えられているに留まる。そこで平成26年度は,“連合非依存性の検索過程”について検証を行った。健常被験者を対象に複数の心理行動実験を行った結果,記憶課題中に視覚情報に変化を加えることで,その成績が向上する傾向が観察された。視覚情報はターゲットと連合しているとは考えにくいものであったため,この結果は,ターゲットとの連合が乏しい情報によって記憶処理が促進されたことを示唆している。これは,ターゲットとの連合強度から検索過程を説明する現行の理解に一石を投じるものである。さらに,エピソード記憶には海馬を始めとした側頭葉内側部が関与することが知られているが,側頭葉内側部は視覚システムの最上位に位置している。したがって,視覚的変化によって連合の乏しい記憶の処理が促される傾向は,“低次視覚野からの無関係な信号入力によりその上位に位置する海馬の活動が固定点の状態に遷移する”と言い換えることもでき,神経科学の観点からも興味深い現象である。なおこれらの成果は現在も分析中であるが,平成27年度のできる限り早い段階で学術論文としてまとめる予定である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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