研究課題
特別研究員奨励費
一重項ビラジカル性を有する化合物は特微的な電子状態とそれに起因する特異な物性を示すことから興味が持たれ、近年盛んに研究されている。ビラジカル性の大きさはビラジカル因子「y」で表され、開殻性が高くなるほど大きな「y」の値をとる。中程度のビラジカル性を有する化合物は高い二光子吸収特性を示すこと、さらに一重項ビラジカル性を有する化合物に電子供与性基と求引性基を非対称に導入することにより二光子吸収特性が向上することが理論的に予測されているが、そのような化合物はこれまでに合成例がなく、光学的性質に興味が持たれる。これまでに私は中程度のビラジカル性を有する化合物としてゼトレン(y=0.41)に注目し、速度論的に安定化された7,14-フェニルエチニルゼトレン誘導体や、そのフェニル基上にアミノ基やニトロ基を導入した誘導体的を合成し、その基本的物性を明らかにしてきた。今年度はまず、それらのゼトレン誘導体の合成法と基本的物性についてデータを取りまとめ、Organic & Biomolecular Chemistryにfull paperとして発表した。次に、ゼトレンと同様に中程度の一重項ビラジカル背位を有し、さらにパイ共役系が拡張したジインデノピレン誘導体の合成に取り組んだ。過去に報告された類似の反応を参考にテトラキス(メシチルエチニル)ナフタレンにヨウ素を作用させたところ予想外の環化反応が起こり、メシチル基が環拡大して7員環になったによりアズレノアセナフチレン部分構造を有する化合物が得られた。この環拡大はビス(メシチルエチニル)ナフタレンにヨウ素を作用させても起こることがわかった。一方、テトラキスメシチルエチニルナフタレンにヨードニウムイオン発生剤を作用させると目的のジインデノピレン誘導体が得られた。
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Organic & Biomolecular Chemistry
巻: 11巻 号: 47 ページ: 8256-8261
10.1039/c3ob41674g