研究課題
特別研究員奨励費
本年度は、トルコにおいて3度の、そしてイギリスで1度の短期史料調査を行い、19世紀オスマン帝国のアルメニア共同体指導層に関して情報を収集した。その結果、彼らの活動に関係する様々な文書を発見しただけでなく、共同体指導層の予備軍となるアルメニア人オスマン官僚として、履歴簿と呼ばれる史料群から1500名を見つけることができ、今後の研究の基礎を築くことができた。こうして収集した史料をもとに、アルメニア共同体指導層がオスマン政府とアルメニア共同体の調整役としてどのような役割を果たしたかを論ずるべく、「政治的口上書禁止問題」と「アルメニア人墓地接収問題」を分析した。これらの問題においては、オスマン政府のムスリム高官と、アルメニア共同体をとりまとめる組織だった総主教座のあいだで利害の調整が必要となった。その際、両者のあいだでなされた交渉において、非公式の調整役としての役割を果たしたのが、一方でアルメニア共同体の指導的な立場にあり、他方でオスマン官僚でもあった人物たちだったことを、アルメニア語史料の読解に基づいて明らかにし、それぞれに関して研究発表を行った。さらに、アルメニア人オスマン官僚に関して、その学歴に見られる傾向を分析し、「帝国末期オスマン・アルメニア人の学校選択」と題する研究発表を行った。加えて、イスタンブルのアルメニア共同体指導層が、東部アナトリアのアルメニア人の状況を問題化する過程を論じた論文"For the Fatherland and the State":Armenians Negotiate the Tanzimat Reformsを、中東研究の分野で国際的に権威の高い学術雑誌International Journal of Middle East Studiesに投稿した。同論文は、2013年2月発行の第45巻1号に掲載された。
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International Journal of Middle East Studies
巻: 45(1) 号: 1 ページ: 93-109
10.1017/s0020743812001274