本年度は、ミクログリア細胞における骨関連因子Runx2の機能的役割について更なる検討を行うため、Runx2を過剰発現させたミクログリア細胞株BV-2細胞を用いて各種ミクログリアの機能解析を行った。さらに、生体内のミクログリア細胞におけるRunx2の機能的役割について検討を行うため、Runx2欠損マウスを用いて解析を行った。 その結果、ミクログリア細胞の機能の1つである遊走能を測定する目的でトランスウェルを用いて検討を行ったところ、Runx2過剰発現BV-2細胞において、走化因子であるM-CSFにより移動した細胞の数が有意に上昇した。 また、Exon4を含む遺伝子領域をloxPで挟んだmutant alleleを持つRunx2 flox/+マウスと、ミクログリアなどに特異的にCre recombinaseを発現するLyz2-creマウスを交配させることにより、Cre-loxPシステムを用いた細胞特異的なノックアウトマウス(Runx2Lyz2-/-マウス)を作製した。さらに、このマウスの第4腰髄神経を切断することで神経障害性疼痛モデルマウスを作製し、von Freyフィラメントを用いて痛みの評価試験を行ったところ、痛みの過敏化がRunx2Lyz2-/-マウスで有意に抑制され、さらに脊髄後角で認められるミクログリア細胞の活性化も有意な抑制が観察された。 以上の結果から、ミクログリア細胞において発現するRunx2は、その役割の1つとしてミクログリアの機能である走化能などを調節する可能性が示唆された。さらに、ミクログリア細胞の活性化により引き起こされる神経障害性疼痛の発症機序にRunx2が関与している可能性が示唆された。これらの解析がミクログリア細胞の更なる機能解明と、中枢の各種疾患に対する治療法や治療薬の開発に新たな展望をもたらすことを期待したい。
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