研究概要 |
表面プラズモンはセンシング、エネルギー捕捉そして波長限界を超えたイメージングなど多様な応用が期待されている。複雑なナノ構造(例えばナノ金属体の集団構造やパターン化されたナノ構造)では、一つあるいは2つのナノ粒子からなるプラズモン共鳴がさらに多数共鳴する状態が現れる。これらは、"bright"と"dark"モードと分類される。対称形の高いナノ粒子の配列化は、"bright"と"dark"プラズモンが干渉し、ファノ共鳴といわれる非常にシャープな共鳴スペクトルを与えることが知られている(Nano Lett. 2010, 10, 3184)。このスペクトルは構造体周辺の誘電率に敏感であるため、高感度なセンサーや、レーザースイッチ、非線形遅延光デバイスなどへの応用が期待されている。これまでに、FDTD計算によって3D八面体ナノクラスターが高効率でファノ共鳴効果を示すことが確認されている。本研究では、DNAを用いて金ナノ粒子の3D規則配列化を行い、高効率なファノ共鳴効果を実証することを目的とした。 金ナノ粒子の集合体形成については数多くの報告があるが、3D八面体の形成は容易でなかった。そのため、本年度はまず金ナノ粒子の結晶面選択的な修飾および結晶成長の制御に取り組んだ。その結果、三角形の金ナノプレートにおいて、PVPなどを用いることで上面および側面を選択的に修飾・保護し、それぞれの結晶面で特異的に結晶成長を誘起できることを発見した。これにより、金ナノプレートのサイズおよび厚さの制御が可能になり、また部位特異的な修飾への知見が得られた。今後、金ナノプレートのDNA修飾、ハイブリダイゼーションを通した3D配列化を経て、ファノ共鳴効果を活用したデバイスの開発へと展開するための基礎的成果が得られた。
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