研究実績の概要 |
π酸性遷移金属を触媒とする骨格転位反応は、他の反応系では切断困難とされる強固なσ結合の開裂を伴うことから、結合活性化反応として興味深い。さらに複雑な分子骨格を一段階で構築する有機合成化学的観点からも魅力的である。申請者は、O-プロパルギルオキシムが新たな合成素子として、全く過去に例がない骨格転位反応を起こすことを明らかにしている。また、当化合物の触媒的骨格転位反応に示唆されている高い反応性を有するN-アレニルニトロンが重要な鍵中間体であるという知見が得られた。申請者は、次なるステージとして、N-アレニルニトロン中間体を捕捉・活用し、O-プロパルギルオキシムの「合成素子」としての有用性の拡充並びに新規触媒反応開発により、高官能基化されたヘテロ環化合物を効率的に構築する有機合成手法を提供する。このような作業指針のもとに、多様なヘテロ環構築反応を見出した(Tetrahedron Lett.2014,55,1178-1182;Org.Chem.Front.2014,1,914-918)。これらの反応は、アルキンの遷移金属のπ配位と、引き続くオキシム窒素原子の求核攻撃によって得られるビニル金属中間体を経て進行する。 今回申請者は末端アルキンを有するO-プロパルギルオキシムとスルホンアジドを銅触媒存在下で反応させた場合、銅アセチリド中間体の発生を経てケテンイミン中間体を生じると予想した。更に、ケテンイミンに対するオキシム窒素原子の求核攻撃を経る新たな分子変換が進行すると考えた。このよしんうな作業仮説の下に、末端アルキンを有するO-プロパルギルオキシムとスルホンアジドとの銅触媒反応について検討した結果、多くの生理活性物質に含まれる基本骨格であるα、β-不飽和N-アシルアミジン化合物が良好な収率で得られることを見出した(Org.Lett.2014,16,5184-5187.)。
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