研究概要 |
本研究では、前頭前野が実行機能に必要な、どのような情報を保持しているか調べるとともに、同部位の神経活動と行動との因果性を明らかにすることを試みた。 まず、複数の動く物体のうち1つだけを内的に追跡する課題(内的追跡課題)遂行中の前頭前野における単一ニューロン活動を記録したところ、約7割のニューロンは標的刺激の位置によって活動を変化させ多野に対し、約2割のニューロンは妨害刺激の位置によって活動を変化させた.さらに興味深いことに,標的刺激と色の違う第二の妨害刺激を同時に提示したところ,いずれのタイプのニューロンもこれに応答しなかった.このことから,これらのニューロンのもつ信号は,外見では見分けられない物体を内的に区別するために有用であり,一見して異なる物体を区別することには有用ではないと考えられる. さらに、このようなニューロン活動が、物体選択に因果性を持つかを調べるため、内的追跡課題遂行中の前頭前野に電気刺激を行った.そうしたところ、視覚刺激の動き始めに電気刺激を与えた時にのみ、最終的に選択する視覚刺激の位置を変えることができた. これらの成果によって、前頭前野による空間的注意のトップダウン制御として、妨害刺激をモニターするための神経機構があることを世界で初めて見出すとともに、自由意思による視覚対象物の選択を微小電気刺激によって人為的に操作できることを示した。これらの知見は、前頭連合野の新たな機能を明らにし、現在の注意理論の一部に再考を迫るものである。
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