研究課題
特別研究員奨励費
地球規模で進行する気温上昇が土壌中の窒素循環を担う様々な土壌生物へ及ぼす影響が懸念されている。ササラダニやトビムシなどの中型土壌動物は落ち葉を物理化学的に改変する事で、落ち葉に由来する土壌中の窒素動態へ影響を及ぼす。また、細菌や真菌類は窒素の無機化や硝化を担い窒素循環を駆動する。過去の研究から、温度の変化は各生物の代謝活性の変化を通じてその個体数やバイオマスへ影響を及ぼす事が知られている。一方、気温上昇は、植生タイプの変化も引き起こす。植生タイプの変化はリターの性質の変化などを通じて、中型土壌動物や真菌類、細菌類の個体数や現存量へ影響を及ぼす事が予想される。しかし、過去の研究では、気温の変化、植生タイプの変化のどちらが各生物群の現存量へ強く影響するか、卓越する影響プロセスは生物群によって異なるのかは明らかにされていない。そこで本研究では、八甲田山にある標高別試験地(低標高域ではブナ林、高標高域ではオオシラビソ林)において有機物層に生息するササラダニおよびトビムシの個体数、細菌、そして真菌類の現存量が、植生タイプの違い、もしくは各植生タイプ内の年平均気温に応答するか調査した。その結果、同じ中型土壌動物でもササラダニに比べてトビムシの個体数が気温変化へ反応しやすいが事が明らかになった。トビムシはブナ林では温度の上昇に伴って個体数を増加させた一方、オオシラビソ林では減少させる傾向があった。真菌類は、オオシラビソ林においては温度上昇に伴ってその現存量が増加する傾向があった一方、ブナ林では減少した。また、細菌類の現存量は温度の変化に対する反応を示さず、植生タイプの違いによる変化のみが確認された。以上の結果から、今後、気温が上昇した際、窒素循環に関わる土壌生物に及ぼす影響は、分類群間によって異なる事、温度変化と植生タイプの変化は相互に作用しながら土壌生物へ影響する事が示唆された。
(抄録なし)
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