研究概要 |
本研究では表面改質法の一種であるピーニングを用いて生体材料の高機能化を実現するため, 適切なピーニングおよび処理条件の選択が必要となる. 本年度は以下二点の研究を行った. 1. 衝撃力の計測による圧縮残留応力の推定. 2. 下限界応力拡大係数範囲に及ぼすショットピーニングの影響. 1. 衝撃力の計測による圧縮残留応力の推定 ピーニングによる疲労強度向上の一因として, ピーニングで導入される圧縮残留応力が考えられるので, 材料に導入される圧縮残留応力の分布を推定することは, 重要である. ピーニングにより生じたピット形状の観察, PVDFセンサを用いた衝撃力の測定およびX線回折法を用いた残留応力の測定を行い, それらの結果から圧縮残留応力導入深さの推定およびその妥当性を検証した. その結果, 最大負荷応力が塑性域の深さすなわち圧縮残留応力の導入深さを推定する指標となることが明らかとなった. 2. 下限界応力拡大係数範囲に及ぼすピーニングの影響 ピーニングによる疲労強度向上機構を明らかにするため, ピーニングによって圧縮残留応力を導入した金属材料の疲労亀裂準展挙動を評価した. 本実験では荷重制御型平面曲げ疲労試験機を用い, オーステナイト系ステンレス鋼JIS SUS316Lのショットピーニングを施した試験片と未処理の試験片に対して, それぞれ応力拡大係数漸減試験を行い, 下限界応力拡大係数範囲を明らかにした. その結果, 表面への圧縮残留応力の導入により下限界応力拡大係数範囲が増大していることが明らかとなった.
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