研究概要 |
高速車両や超音速機の機体表面に生じる粘性摩擦抵抗の低減手法の開発は, 燃料消費を減少させ, 環境負荷を軽減させる上で重要である. 計算機の能力向上および数値解析手法の発達により, 多くの制御手法が数値シミュレーションで検証されて来たが, 高速条件下[高レイノルズ(Re)数及び高マッハ(M)数]の乱流構造への影響を踏まえた解析は乏しいと言える. 本研究では低Re数条件下で確かめられている壁面からの一様吹出し及び吸込みの効果の, Re数及びMa数依存性を考察する. 【レイノルズ数依存性】 主流速度の0.1%の強さでの一様吹出し・吸込みを330<Re(=U_∞θ/v)<550から800<Re<2500の範囲に拡大して空間発達乱流境界層のラージエディシミュレーションを行った. 低Re数での結果と同様に吹出しで摩擦低減, 吸込みで増加が確認された. 吹出しによる抵抗低減率は, 低 Re数かつ狭い領域で得た10%よりも高く18%を達成した. 同様に制御効率も向上した. 本結果から, より高いRe数条件下でも摩擦抵抗低減を達成し, 吹出し領域を拡大するほど高い摩擦抵抗低減率を得ることが確認された. 【マッハ数依存性】 バルク質量流量の0.1, 0.3, 0.5%の吹出し・吸込みを用いた乱流チャネルの直接数値シミュレーション(DNS)を, Ma=0.8および1.5で行った. この際, 前年度の結果を踏まえて数値計算精度を向上させている. ベース流れの摩擦Re数は200とした. 非圧縮での先行研究と同様に, 吹出し壁で摩擦低減, 吸込み壁で増加が確認された. 超音速条件下では, 亜音速条件下よりも吹出し・吸込みの影響が小さくなる傾向が確認された. 同摩擦Re数, 主流Ma数を1.5, 吹出し強さを主流の0.1%として空間発達乱流境界層DNSを実施し, 非圧縮計算による先行研究とほぼ同様の約15%の摩擦低減を得た. 今後衝撃波に関する考察が必要となる.
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