研究概要 |
本研究では、平成24年度の成果を踏まえ、知的障害者のきょうだいが有するケア役割の実態を明らかにすることで、生きづらさを軽減するための支援を再考することを研究目的とした。具体的には、(1)成人期のきょうだいが有するケア役割は、児童期に担っていたケア役割と関係していると考えられるため、ケア役割の構築プロセスを明らかにすることで、生きづらさを軽減するための支援を再考すること、(2)きょうだいと、障害のある兄弟姉妹の性別及びその関係(異性か同性か)から生じる生きづらさを明らかにすること、(3)きょうだいのケア役割を日米比較することで、日本独自の障害者福祉サービスや家族観等から生じる生きづらさを明らかにすることの3点であった。その背景には、きょうだい支援の実践の場としてのセルフヘルプ・グループによる支援では浮き彫りにならない、あるいは共有されにくい困難があった。 平成25年度は、前年度に引き続き、先行研究レビューを進めると同時に、2013年2月下旬から3月中旬にかけてアメリカで実施した、知的障害者のきょうだいを対象としたケア役割に関するインタビュー調査の分析・考察を行った。 また、2013年6月にアメリカのピッツバーグで開催されたNational Sibling Leadership Network Conference (SLN Conference)の視察及び報告を行い、アメリカの当事者や支援者・研究者たちと情報交換を行った。SLN Conferenceでは、Power of Storytelling, Research Panel, Supports and Resources across the Lifespan, SLN Activities and Sibling Engagement, National Perspectives, Civil Rights, Self-Determination, Empowering Siblings等の観点から、アメリカにおける障害者のきょうだい支援の動向と課題が伺えた。SLNは、障害者のきょうだいの立場にある者が障害分野の政策に関する決定権を得るためにSLNに集結する必要があると主張する。また、SLNは、障害者のきょうだいだけでなく、研究者や専門職とのかかわりを積極的に行っていた。今後、SLNが実施している取り組みが日本のきょうだい支援団体にどのような形で応用していけるのかについて検討していきたい。
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