研究概要 |
木星の衛星イオは大量のプラズマを周囲に放出し、イオの公転軌道を包むようにプラズマトーラスと呼ばれるプラズマ密度の高い領域が形成されている。イオとプラズマトーラスは相互作用し、その結果、イオ付近の磁力線には沿磁力線電場が形成され、それによって加速された電子が木星に降り込み、オーロラを励起している。この電子を加速する電圧は、経度方向に対して一定であるが、一方で木星表面における電流密度は経度方向の東方向に対して減少する。この観測事実からの示唆は一般的なオームの法則では説明できない。本研究の目的は、このイオ関連オーロラの電流電圧関係のメカニズムを解明することである。 我々は沿磁力線電場の起源として従来の抵抗ではなく、電子移流項が重要であると考えた。そして、電子移流項を含む磁気多流体方程式系を木星-イオ結合系に適用し、時間発展をシミュレーションした。ここで、シミュレーション空間はイオに対して経度方向の東方向の相対速度を有するとして、時間発展を経度方向の空間変動として扱った。シミュレーションの結果、沿磁力線電流密度がある一定値を超えた場合、磁気圏プロトンのイオン音波の振幅が増幅され、最終的に密度不連続に伴う電位ギャップ(以下「電子加速層」)が形成されることが分かった。電子加速層の高度は、ある釣り合いの高度に向かって変動することが分かった。また、電子加速層の電圧は電流密度の2乗に比例し、電離圏プロトン密度の2乗に反比例する。我々の研究により、イオ関連オーロラの電流電圧関係の原因は、沿磁力線電流密度と同じ割合で、電離圏プロトン密度が減少することであることが示唆された。 以上の成果は学会やMatsuda et al.[2012, JGR]に公表済みである。
|