研究概要 |
私たちはこれまでにマウス線維芽細胞MEFには造血幹細胞支持能が存在するが、Med1^<-1->MEFの造血幹細胞支持能が野生型MEFに比べて低下することを報告している(Sumitomo, Ishino, et al. Mol Cell Biol 30, 4818-4827, 2010)。マイクロアレイにより、野生型MEFに比べて発現が低下する分子として、線維芽細胞増殖因子(FGF)7が検出された。FGF7はmRNAレベルと蛋白レベルにおいてMedl^<-1->MEFで野生型に比べ著しい発現低下がみられた。私達が持つ造血ニッチモデルを用いてFGF7の存在下では骨髄細胞の増殖と造血幹/前駆細胞の支持が行われていることがわかった。ニッチ細胞依存性の骨髄芽球性白血病細胞MB-1においても抗FGF7抗体を添加して培養したところ、細胞数およびコブルスストーン数が有意に減少した。しかし、FGF7の受容体であるFGFR2IIIbの発現分布を調べたところ、骨髄間質細胞に発現を認めたが、骨髄造血細胞(血球)では全く発現していなかった。そこで、フィーダー細胞にもたらすFGF7刺激の影響を検討したところ、MEFや骨髄問質細胞が産生したFGF7はオートクライン機構によりMEFや骨髄間質細胞自身に作用していることがわかった。以上より、FGF7は骨髄間質細胞の発現するFGFR2IIIbを介して間接的に正常造血幹/前駆細胞および骨髄芽球性白血病幹細胞の支持・増殖を担うことが強く示唆された。 間葉系幹細胞は近年注目されているニッチのひとつで、骨髄以外にもさまざまな組織に存在している。由来組織によってその性質は違い、中でも臍帯由来の間葉系幹細胞はES細胞に近い性質をもっとされている。マウス臍帯をコラゲナーゼ処理し、諸条件で培養したところ、一部の細胞で骨分化・脂肪分化を誘導できた。今後はより高率で間葉系幹細胞が分離できるよう検討を重ねる予定である。
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