研究概要 |
本年度は, 昨年度に引き続き海底地震観測を実施し, 特に浅部低周波微動の解析を中心に行い, 日向灘におけるプレート間固着の不均質構造(特にプレートが沈み込む方向)を明らかにした. 海底地震観測期間中, 地震活動は極めて低調であったプレート境界浅部領域であるが, 2013年5月下旬から6月下旬にかけて日向灘プレート境界浅部で発生する浅部低周波微動を震源域近傍で捉えることに初めて成功した. 今回捉えられた活動は非常に活発であり, かつ海底地震観測網の中で活動が見られたため, 震源を非常に精度良く求めることが可能となり, 活動の詳細が初めて明らかにされた. 特に, 微動活動がマイグレーション(移動)を伴っており, プレート境界の等深度線に沿ってマイグレートしている可能性が明らかとなった, これは, 微動が同じ温度・圧力条件下でのマイグレーションを示唆しており, プレート境界浅部での微動活動をこれほどまでに詳細に明らかにした研究は, 本研究が世界で初めてである, また, 九州パラオ海嶺が微動のマイグレーションを妨げる働きをしていることが分かった, これは, 九州パラオ海嶺がプレート境界面上のすべりの進展を妨げる「バリア」の役割を果たすことを示す重要な証拠である. 昨年度の結果も踏まえ, 日向灘におけるプレート間固着の不均質構造モデルを以下のように提示した. ・プレート境界浅部領域から小繰り返し地震発生層の深さ上限付近までは非地震性すべりが卓越し, 小繰り返し地震発生層の深さ上限から下限(つまり, プレートの沈み込む方向)においてプレート間固着が徐々に強くなる. ・プレート境界浅部領域では低周波微動活動を伴う間欠的な短期的スロースリップによってある程度の歪みを開放している可能性がある. ・九州パラオリッジがプレート境界面上のすべりの進展を妨げるバリアの役割を果たすと考えられる.
|