研究課題/領域番号 |
12J03737
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
消化器内科学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
本澤 有介 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸内細菌叢 / 有益な細菌(good bacteria) |
研究概要 |
炎症性腸疾患(IBD)では腸管内の様々な抗原に対する過剰な免疫応答が関与していると考えられ、中でも腸内細菌は腸炎の発症及び慢性化に重要な役割を果たしている。本年度は、マウスにおける腸内細菌叢と陽炎の関係及び食事に含まれる微最元素による環境の変化が腸炎に及ぼす影響について検討を行った。 方法) 自然腸炎発症マウスであるInterleukin (IL)-10ノックアウト(KO)マウスを用いて糞便サンプルを回収し、腸内細菌叢の解析を行った。同マウスの腸炎の発症前後における腸内細菌叢を比較し、さらに食事内容中の微量元素の一つである鉄の有無によるマウスの腸炎の程度および腸内細菌叢の比較も行った。 結果) 1. 腸炎の発症していない4週齢IL-10KOマウスと腸炎の発症した12週齢のマウスでは腸内細菌叢が異なっていた。 2. IL-10KOマウスに4週齢まで同様の食事を与え、以降は①鉄の含有する食事を与えた群②鉄の含有しない食事を与えた群に分け、12週齢の時点で腸炎の程度を検討したところ、鉄の含有していない食事群において腸炎が軽度であり、腸内細菌叢も異なっていた。 考察) IBDモデルマウスでは腸炎の有無により腸内細菌叢も異なることが明らかとなった。また、鉄の有無によって腸炎の程度や腸内細菌叢に違いが認められる事より環境変化による腸内細菌叢の変化が腸炎の発症に影響を与えることが明らかとなった。前年度の結果と総合すると、異なる遺伝子背景に加えて環境因子も腸内細菌叢に影響を与えていることが示唆された。これらの結果から、腸内細菌叢の是正は炎症性腸疾患の治療に重要であると考えられる。ヒト検体による腸内細菌叢の解析が可能であった事から、IBD患者の糞便サンプルを用いた腸内細菌叢の解析を行う事により、個々の患者の腸内環境に有益な細菌(good bacteria)を同定できるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験におけるマウス腸内細菌叢の解析により、異なる遺伝子背景に加えて環境因子も腸内細菌叢に影響を与えていることが判明し、有益な細菌(good bacIeria)の同定が可能であった。加えて、こられの細菌由来DNAにおける免疫刺激性配列(Immunostimulatory sequence oligodeoxynucleotides ; ISS-ODNs)の同定も行った。今後、good bacteria由来のISS-ODNsをIL-10KOマウスに投与し、その腸炎抑制効果を検討する予定である。しかしながら、ヒト腸内細菌叢は多様性に富んでいる。理由として、遺伝子背景および環境の違いが考えられる。従って、今後もより多くの健常人の腸内細菌叢を解析することにより、有益な細菌(good bacteria)の同定を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
多くの条件下でのマウスの腸内細菌叢の解析結果より、遺伝子背景に加えて環境因子も腸内細菌叢に影響を与えていることが判明した。ヒト腸内細菌叢解析による有益な細菌(good bacteria)の同定には、より多くの検体が必要である。今後、同定された有益な細菌(good bacteria)を回収し、細菌由来DNAによる免疫刺激性配列(Immunostimulalory scqucnce oligodcoxynucleotides ; ISS-ODNs)の同定を引き続き行う。このISS-ODNsの効果を検討するためにIBD患者の腸管組織より採取した樹状細胞および粘膜内リンパ球を単離・培養する。その後、各細胞に対する反応性をその培養細胞上清中のサイトカイン濃度や細胞のToll like receptor (TLR)蛋白を測定することにより検討する。またこのISS-ODNsをIL-10KOマウスに投与し、その腸炎抑制効果を検討する。
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