研究概要 |
発電機構を内蔵したエネルギー自立型の細胞治療システムの実現を目的としている。本年度は, 1.バイオ発電による細胞治療の検討と, バイオ発電フィルムとコンタクトレンズの一体化を前年度に引き続き行った。加えて1.で培った技術を利用することで, 皮下へ薬剤や水分を導入することができる皮膚貼り付け型使い捨てパッチの開発2.にも取り組んだ。 1. バイオ発電による細胞治療の検討 本研究は, 創傷部と通常部の間に発生する電流を果糖から発電するバイオ燃料電池を用いて増幅することで, 創傷部への細胞遊走を促進することを目的としている。バイオ燃料電池による細胞遊走の様子は, 前年度に開発したバイオ燃料電池と今年度新たに作成した評価系を用いることで, 角膜上皮細胞における電流と細胞の遊走速度の対応が確認された。また遊走に伴う細胞の生化学的な応答の観察にも成功した。最終的に, 光重合性のハイドロゲルを利用したバイオ発電フィルム内臓のコンタクトレンズ型の開発にも着手し, 動物実験を行った。 2. 皮下貼り付け型皮膚パッチの開発 昨年度開発した高効率バイオ電池を用いて, 有機物のみで構成された, 皮膚貼付型の電源内蔵使い捨てパッチを開発した。酸素透過性のメディカルテープに, 凍結乾燥処理を施し保存性を高めた酵素電極とPEDOTの配線を貼り付け, 燃料を含むゲルシートを組み合わせて使用する。グルコース溶液によるバイオ発電によって, 肌の保湿とマッサージ(しわ取り)に適した流量の水分を皮下に送り込めるという結果が得られた。また, 皮下への薬剤導入に関しても, モデル分子であるローダミンについて, ブタの皮膚を用いた実験で投薬促進効果が認められた。
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