研究課題/領域番号 |
12J03881
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
実験病理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
王 佑香梨 (星野 佑香梨) 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ヒト膵癌症例 / Smad4 / ALDH1A1 / コロニー形成能 / SMAD4 / ALDH1 / ChIP解析 / 未分化性マーカー |
研究概要 |
本年度は①膵癌症例組織を用いたSMAD4とALDH1の発現確認、②腫瘍形成におけるALDH1A1の機能解析を行った。 ①これまでの研究により、膵癌細胞株において、Smad4がALDH1A1の発現を負に制御することが分かっている。従って、今年度は、ヒト膵癌症例組織(中分化型腺癌)の癌中心部と癌辺縁部をそれぞれ8病変ずつ、計16病変を用いて検討を進めた。Smad4とALDH1それぞれに対する抗体を用いて免疫組織化学染色を行ったところ、16病変中11病変に関して、Smad4とALDH1の発現に逆相関が確認できた。これは、Smad4によるALDH1の発現制御が、予後不良のヒト膵癌においても機能しており、臨床における大きな知見をもたらしたと考えられる。 ②ALDH1はretinalをretinoic acidに酸化する酵素であり、これまでに乳癌や胃癌などの癌幹細胞マーカーとして報告されている。しかしながら、癌細胞における機能に関しては未だ明らかでなく、本年度は膵癌におけるALDH1の機能解析に着目した。まず、膵癌細胞Panc-1にレンチウイルスを用いてshALDH1A1を導入し、恒常的にALDH1A1発現をノックダウンした細胞(Panc-1-shALDH1A1細胞)を樹立した。この細胞を用いて細胞増殖を検討したが、コントロール細胞(Panc-1-shNTC細胞)と比較して、明らかな増殖の差は確認できなかった。次に、軟寒天中にPanc-1-shNTC細胞とPanc-1-shALDH1A1細胞を培養し、二週間後のコロニー形成能を調べたところ、Panc-1-shALDH1A1細胞はほとんどコロニーを形成しないことが分かった。以上のことから、ALDH1は足場非依存的な増殖に重要な機能を有しており、膵癌細胞の造腫瘍能に深く関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はヒト膵癌症例を用いた検討を中心に研究を進める予定であったが、研究実績の概要にも示した通り、順調に結果を残すことができた。ヒト膵癌を用いた解析では、抗体の最適化を行い、最終的にSmad4とALDH1の発現の逆相関を示すことができた。さらには、これまで未解明であったALDH1A1の癌細胞における機能を示すことができた。これは、ALDH1A1を標的とする新たな治療法を確立するのに非常に重要な知見であると思われる。 以上の結果から、本年度はおおむね順調に進展したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は論文投稿に向けての準備を進めていく。 これまでに得たデータの整理を行い、論文作成を進めていく予定である。そのうえで、本研究における補足的なデータも随時解析していく予定である。これまでChlP解析によりSmad4がALDH1A1ゲノム上に結合することが分かっている。このことに対する更なる検証を行うため、ALDH1レポーターコンストラクトの作成を行い、Smad4がALDH1A1ゲノムのどの領域に結合するかを詳細に解析する予定である。同時に、本研究は統計学的な解析が不足している部分もあり、このような点に関しては、追加実験を行うことで補足を行っていく予定である。
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