研究概要 |
私は修士論文においてカスプ特異点と呼ばれる複素3次元空間内の複素超曲面特異点のリンクに入る自然な接触構造はSol多様体上のアノソフ流に付随する正の接触構造と同値であることをHirzebruchの複素2次元Hilbcrt modular cuspの構成を用いて証明した. 今年度の研究成果の1つはその別証明を与えたことである. 具体的には, 森淳秀氏によって考案されたトーリック幾何を用いた5次元球面への接触埋め込みの構成法があるが, それによって得られる例とカスプ特異点のリンクが接触部分多様体としてイソトピックであるということを示した. 森氏の構成法は埋め込みの様子が目に見える形で提示されているので, カスプ特異点のリンクが5次元球面にどのように埋め込まれているかが分かるようになった. カスプ特異点のリンクは5次元ルッツツイストの局所化と密接な関係があるが, 7次元ルッツツイストは複素3次元Hilbertmodularcuspのリンクに沿って行われる. そこで複素3次元Hilbert modular cuspの最も簡単な例を用いて7次元ルッツツイストの具体例の提示とその局所化の問題の定式化を行った. これらについては, Tokyo Journal of Mathematicsに掲載が決定した論文にまとめてある. また関連する内容として, 5次元ユークリッド空間の余次元2接触部分多様体の決定を行った. 結論としては, 3次元閉接触多様体について, 5次元ユークリッド空間上の何らかの接触構造へ接触埋め込みが存在することと第1チャーン類が自明であることが同値であることが分かった. さらに, 2連結な5次元以上の(2n+1)次元閉接触多様体は(4n+1)次元ユークリッド空間上の標準的接触構造へ接触埋め込み可能であることも示した. これらについては論文としてまとめ, 現在投稿中である.
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