研究概要 |
(1)脱芳香族化ピリジン骨格を有するホスフィン-ホスファエテン型の非対称PNPピンサー錯体[K(18-crown-6)][lrCl(PPEP*)](1)は、アミン類のN-H結合切断に高い反応性を示した。一連のパラ置換アニリンを反応基質として錯体1によるN-H結合切断機構について反応速度論とDFT計算を用いて解析し、電子求引性基を有する比較的酸性度の高いパラ置換アニリンの反応では、Brensted塩基であるPPEP*配位子による脱プロトン化機構によりN-H結合の活性化が起こることを明らかにした。一方、酸性度の低い基質の反応では、ホスファエテニル基の強いπ受容性によってLewis酸性の向上したイリジウム中心への配位がN-H結合の切断反応に必要であることを示した。 (2)アミド錯体[Ir(NH2)(PPEP)](2)は電子豊富な錯体であるが、塩基の作用によって容易に脱プロトン化され、K[Ir(NH2)(PPEP*)](3)に誘導化された。錯体3は室温で二分子のアセトニトリルと速やかに反応し、ビス(シアノメチル)錯体K[lr(CH2CN)2(PPEP)](4)を与えた。錯体4の結晶構造にはイリジウムからPPEP配位子への強いπ逆供与に伴うP=C結合の顕著な伸長が認められ、ホスファアルケンの強いπ受容性によって、電子密度の高いアニオン性錯体4が効果的に安定化されている様子が明らかとなった。 (3)PPEP*配位子を有する一連の錯体[lr(L)(PPEP*)](L=C1-(1), CO(5), tBuNC(6), PMe3(7))を用いて、アルコールによる一級アミンの触媒的N-アルキル化反応が、中性条件下で、効率的に進行することを見出した。また、配位子Lと反応条件の選択により、対応する二級アミンとイミンをそれぞれ高選択的に合成できることを示した。
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