研究概要 |
申請研究者はRCNMVの複製酵素タンパク質に結合する宿主タンパク質を二段階共免疫沈降法および質量分析により同定した. ゴルジ体からERへの輸送を担うCOPI輸送小胞の形成に必須であるADP-ribosylation factor 1 (Arfl), ERからゴルジ体への輸送を担うCOPII輸送小胞系の制御因子であるsecretion-associated RAS-related1 (Sar1), さらにホスファチジン酸(PA)の産生に関わるphospholipase D (PLD)などを新たな宿主因子候補タンパク質として同定することに成功した. RCNMVのRNA複製におけるArflおよびSarlの機能については昨年度に報告した(Hyodo et al., 2013). RCNMV感染が細胞内膜輸送系に与える影響をER-ゴルジ体の経路を通って細胞膜へと輸送されることが知られているタンパク質をマーカーとして調べた. RCNMV感染細胞ではこれらのマーカー・タンパク質の細胞膜への輸送が正常に行われず, 細胞内でっまっていることを発見した. p27を発現させた細胞でもこの現象は観察された. 従ってRCNMVはp27を介して膜輸送系が撹乱すると考えられる. 本成果はPlant Signaling & Behaviorに報告した(Hyodo et al., 2014). PLDノックダウン植物ではRCNMVの感染が抑制されることから, PLDはウイルス感染において必要な宿主因子であることが明らかとなった. さらに, PLDによるPA産生はRCNMV複製に必要であることが分かった. RCNMV感染葉ではPAの蓄積量が約3倍程度にまで増加することから, RCNMVはPLDを活性化し, ウイルス複製に適したPAを多く産生させることで自身の感染を有利に進めていると考えられた. 本成果は特定のリン脂質が直接的にウイルス複製を促進することを証明した初めての知見であり, そのインパクトは大きいと考えられる, 本成果は現在原著論文として投稿準備中である.
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