研究概要 |
私はこれまで、種子を無性的につける外来種セイヨウタンポポが、有性生殖を行うニホンタンポポと花粉を通して繰り返し交配し、ニホンタンポポの持つ耐病性遺伝子(R-gene)を受け取る事で日本の環境に適応進化している、という仮説を検証する事を目的に研究を行ってきた。 平成25年度はまず、雑種が野外でニホンタンポポと繰り返しの交配を行っているという結果を論文にまとめ、Plant Systematcs and Evolution誌に投稿、受理された。 耐病性遺伝子の実験では、ニホンタンポポ、雑種、セイヨウタンポポ、レタスについて縮重PCR, クローニングを行い、合計732個のR-geneを得た。その結果、タンポポはレタスの20のRGCサブファミリーのうち14個を共有していたが、各サブファミリー内では、レタスとタンポポは大きく異なり、タンポポ属特有の多様なR-geneが見られた。この結果は菌叢比較で用いられるUniFracによるID Clusteringによっても支持された。これらのR-geneは、タンポポ属に特異的な病原体との共進化の結果生じたと考えられる。また、セイヨウタンポポとニホンタンポポとが高いブートストラップ値で異なるクラスター4つのうち3つは、雑種はセイヨウタンポポと配列を共有しており、更に、雑種特有の配列が11個見られた。これらの結果は、当初の予測に反し、雑種がニホンタンポポの配列をあまり共有していない事を示している。これは、病原体側がニホンタンポポのcommon genotypeに適応している状態を考えると説明出来る。その場合、雑種は同所的な在来種の一般的な遺伝子型を共有しない方が有利だろう。雑種は、雑種化によって受け取った在来種の稀なアリルを保持する事で病原体の感染を逃れているかもしれない。
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