研究概要 |
L-アゼチジン-2-カルボン酸加水分解酵素(以下、A2CH)を用いた蛍光光度分析 前年度に引き続いて、A2CHとその基質L-アゼチジン-2-カルボン酸(AZC)の相互作用を解析するための研究を行った。まず、溶液状態のA2CHを波長295nmの光で励起して、内在するTrp残基に由来する蛍光を観察した。0.01~0.1MのAZC存在下で野生型A2CH溶液の蛍光光度測定を行ったところ、AZC濃度の上昇につれて蛍光強度の減少が見られた。これは、基質との相互作用によって触媒部位周辺の微小環境が変化することを示すと考えられた。一方、基質アナログのL-プロリンを同様にして加えた場合には、蛍光強度はあまり変化しなかったことから、A2CHとL-プロリンとの相互作用は基質に比べて非常に弱いことが推定された。 L-アゼチジン-2-カルボン酸加水分解酵素(以下、A2CH)を用いたX線結晶構造解析 前年度作製した変異体に比べて酵素全体の構造へ変異が与える影響がより小さい、新たな変異体W20F, H184A, T16Vを作製した。このうち結晶化に成功したW20F, H184AについてはX線構造解析を行った。いずれも全体的な構造は野生型に相似していた。これまでに得られたA2CHの構造では、触媒部位の入りロ付近にあるTrp20の側鎖、および残基番号204-211のループ領域(リッドループ)が、基質の有無によって異なる構造をとることが分かっていた。しかし、H184Aのアポ酵素の構造では、Trp20の側鎖やリッドループが複合体型構造をとっていた。また、W20Fの構造は、変異部分Phe20の側鎖に揺らぎが見られ、H184Aと同じく基質が入っていないにもかかわらずリッドループがふさがっていることが分かった。このことから、W20F, H184Aともに基質認識に重要な役割を担っているのではないかと考えられた。
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