研究概要 |
本研究計画では頭尾構造を明確に制御したポリチオフェンの合成反応を「廃棄物の低減」に焦点を当てて検討してきた。私はこの問題に対し原子効率(アトムエコノミー)の改善に注目し, モノマー合成から実際の重合反応までの一連のプロセスの最適化を目指した。従来のポリチオフェン合成ではモノマーを, 有機リチウム試薬を用いてリチオ化したのちより副反応が起きにくいマグネシウム反応剤や, 亜鉛反応剤へ金属交換しなければならなかったが, 本研究を進めることで適切な溶媒と触媒を用いることで有機リチウム試薬から直接ポリチオフェンが合成可能であることが分かった。この反応は亜鉛やマグネシウムなどの余計な金属を使わないでいいだけでなく, 有機リチウム反応剤の反応性の高さから短時間に合成可能であるという特徴を有している。また昨年度の研究結果を応用しマグネシウムアミドを塩基として用いることで簡便な操作でブロック共重合体が合成可能であることを見出した。この方法を用いれば同じ容器内にモノマーと塩基を順番に滴下するだけでブロック体が合成可能である。最後にC-S結合の切断を伴うポリチオフェン合成を行った。スルフォニル墓は天然物にもみられる一般的な構造ではあるがそれを脱離基にカツプリング反応を行った例は少なく, またスルフォニル基を脱離基としてカップリング反応を用いる重合反応を行った例は私の知る限りない。本研究ではフェニルスルフォニル基を脱離基として用いることで50℃という比較的温和な条件下でチオフェンの重合反応が進行することが分かった。またスルフォニル基の電子求引効果によりチオフェン5位のプロトンの酸性度が上がりより温和な条件下でメタル化反応が進行することも分かった。
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