研究課題/領域番号 |
12J04366
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
地域研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日向 伸介 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | タイ / 近代国家形成 / 王権 / ナショナリズム / バンコク国立博物館 / 美術史 / 文化財 / ダムロン親王 / ワチラヤーン親王 |
研究概要 |
平成25年度の主要な成果として、まずは天理南方文化研究会発行の学術雑誌『南方文化』に掲載された論文「ダムロン親王『シャム仏蹟史』(1926)の成立と思想」があげられる。本論文では、これまでおもに美術史の分野における著作と見なされていた『シャム仏蹟史』をとりあげ、政治思想的な観点から再評価を試みた。その結果、同書は美術史的な説明をおこなうと同時に、王権の正統性・シャムの統一性・バンコクの中心性を主張するものであったことを明らかにした。 図らずも、気鋭の若手研究者として知られるシリポット・ラオマーナチャルーン(美術史)、チャートリー・プラキットノンタカーン(建築史)の両氏が、『シャム仏蹟史』をテーマとした論文を拙稿と同時期にタイ国内において発表していた。この事実は、タイ人の歴史家にもひけをとらない研究代表者(日向)の的確な問題意識のあらわれといえる。 学会発表については、東南アジア学会およびタイ北部の都市チェンマイでおこなわれた国際学会「Thai Studies through the East Wind」で口頭発表をおこなった。上記の論文は、東南アジア学会における発表の一部をもとにした成果である。また、国際学会では平成24年度に発表した論文をペースにタイ語で[頭発表をおこない、タイ思想史の第一人者であるサーイチョン・サッタヤーヌラック教授から貴重なコメントをいただいた。 バンコクの公文書館・図書館等でおこなった史料収集調査においては、1924年にタイ初の文化財保護令が公布された背景を示す重要な公文書を発見したことが最大の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①博物館コレクションの形成に関する研究、②タイ美術史の形成に関する研究、③バンコク国立博物館の公共性に関する研究、という三点の目標を設定した。現在までに、その全ての点について口頭発表をおこない、二本の査読付論文(日本語)、二本の学会提出用論文(英語)として成果を公表した。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね計画通りに目標を達成することができたので、今後はその成果をまとめて単著として公表したい。その際、既存の成果にくわえて次の二点について考察をおこなう。第一に、イギリス人による近代仏教学の成果がダムロン親王の思想に与えた影響についてである。ダムロン親王に関する研究は多数あるものの、この基本的な点に着目して論じた研究は皆無であり、オリジナリティの高い成果が期待される。第二に、工芸技師として絶対王制期のタイ政府に雇われていた三木栄などに着目し、戦前~戦中期の日本との文化交流の実態、およびその政治性について明らかにしたい。
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