研究実績の概要 |
本年度では, 磁束変調型磁気ギアのポールピースの支持方法に着目し, 支持部材を含めた磁気ギアの高効率化を図った。また, 磁気ギアと市販の機械式遊星ギアの実験的特性比較を行った。 磁束変調型磁気ギアの重要な構成要素であるポールピースは複数の磁極片から構成されるため, それらが内外2つの磁石回転子の間に配置されるため, 支持が容易ではない。検討では, ポールピースの支持部材に渦電流が生じない樹脂を用いたときの強度を評価するとともに, 支持部材とポールピースを改良した試作機による実証実験を行った。3次元有限要素法による構造解析の結果から, 支持部材にフェノール樹脂を用いたときの最大変位はギャップ長に対して約0.03%であった。磁気ギアの初期試作機の支持部材はアルミニウム合金を用いていたが, 検討結果より, アルミニウム合金をフェノール樹脂に置き換えることは十分可能であることが明らかになった。得られた知見に基づき, ポールピースの支持部材を改良した磁気ギアを試作したところ, 最大効率は入力速度100r/minのとき約99%に達した。 次いで, 磁気ギアの特性を客観的に評価するために, 現在広く用いられている機械式ギアとの実験的な比較を行った。なお, 比較対象の機械式ギアは, 試作磁気ギアとおおよそ等しいギア比および定格トルクを有する市販の機械式遊星ギアを用いた。両者の無負荷損失を比較した結果, 実験を行ったすべての速度領域において, 機械式ギアに対し磁気ギアの無負荷損が小さいことが明らかとなった。また, 機械式ギアの損失は, 主として歯同士の接触部のクーロン摩擦に起因する機械損であるため, 速度に比例するが, 磁気ギアの損失は鉄心の鉄損と永久磁石の渦電流損に起因するため, 速度の1~2乗に比例して増加することを確認した。したがって, 特に低速領域において, 磁気ギアが低損失であり, 効率優位であることが明らかになった。
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