研究概要 |
本年度の研究では, 申請者が実施した東北大サークル調査データをもとに, 集団内外の社会関係資本の形成および集団内部の社会関係資本の効果について計量分析によって検討した. 分析の焦点は, ①集団の多様性が社会関係資本に及ぼす影響, ②集団の社会関係資本が外集団ネットワークの形成に及ぼす影響, ③集団内部の社会関係資本が成員の健康に及ぼす影響の3点である. ① : 社会関係資本の1つである一般的信頼の形成要因としての多様性の影響を検討した. マルチレベル回帰分析の結果, (1)外向性, 外集団の総紐帯数が有意でなかったことから, 個人の性格や外集団の友人・知人数は, 一般的信頼に影響を及ぼさない. (2)それよりもむしろ, 出身地域が同質な集団内部で, 文化や趣味が多様なメンバーと接触することが, 一般的信頼を高めた. このように, 同質性を基盤として異質な他者と親睦を深めることで, 社会関係資本が増加する可能性が示唆された. ② : 集団の結束型社会関係資本が, 外集団ネットワークの形成に及ぼす影響について, マルチレベル・ポアソン回帰分析によって検討した, その結果, 外集団ネットワーク形成に対して, 集団レベルの認知的社会関係資本が多いと集団閉鎖性が高まり, 集団レベルの構造的社会関係資本が多いと集団開放性が高まることが示唆された. ③ : 集団内部の社会関係資本が, 成員の主観的健康に与える影響について, Heterogeneous Choice Modelによって検討した. その結果, 集団レベルの社会関係資本(信頼・互酬性・ネットワーク)が, 健康に影響を及ぼしていた. この知見は, 先行研究が看過してきた, 集団レベルの効果の重要性を示唆している.
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