研究実績の概要 |
結核菌の細胞壁に存在するグリセロールモノミコール酸(Glycerol Monomycolate; GroMM)は、感染の長期化に伴って特異的に産生が誘導される脂質であることがこれまでの報告において示唆されている(Layre E, et al., Chem Biol., 2009)。昨年度に引き続き、本年度もGroMMの生物活性の検証と、その生理学的意義の理解に向けて研究を展開した。 GroMMの自然免疫受容体の同定を進め、その受容体がC型レクチンの一種であるMacrophage inducible C-type lectin(Mincle)であること、そして、マウスとヒトではその認識能が異なり、ヒトMincleはGroMMを認識できるのに対し、マウスMincleは全く認識できないことを明らかにした。ヒトおよびマウスMincleの細胞外ドメインを相互に置換したキメラ分子ならびに部位特異的変異導入の実験から、ヒトMincleの細胞外ドメインに存在するGroMMの認識に重要な二か所のアミノ酸配列(ヒトMincleの174-176番目、195-196番目の配列)を同定した。また、作製したヒトMincle Tgマウスの骨髄由来マクロファージはGroMMに対して応答性を示したとともに、皮膚にGroMMリポソームを接種すると好酸球浸潤が誘起され、ヒトMincleがGroMMの自然免疫受容体であることを支持するデータを得た。さらに、ヒト末梢血単核球由来マクロファージもGroMMに応答してTNF-αを産生するが、このTNF-αの産生が自身で作製した抗ヒトMincle抗体によって中和されることを示し、プライマリーな細胞においても、GroMM に対する応答はヒト Mincle 依存的であることを実証した。 この成果は、本年度に入り論文に発表した(Hattori Y, et al., J Biol Chem., 2014)。 モルモットにおいて、皮膚にGroMMリポソームを接種すると、ヒトMincleトランスジェニックマウスと同様に好酸球浸潤が認められたことから、新たにモルモットMincleの機能やGroMMに対する生体応答の解明に向けた研究にも着手した。
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