研究概要 |
大陸衝突帯深部での化学的分化プロセスとして重要な異種岩石間の相互作用の際に、岩石の部分融解が果たす役割を解明するため、南極、昭和基地南方地域のザクロ石珪線石片麻岩とドロマイト質大理石との互層に着目した高温・高圧実験を行った。 高温・高圧実験には、横浜国立大学のピストンシリンダー型高圧実験装置を使用した。具体的には、円筒状に加工したドロマイト質大理石(直径2-3㎜, 長さ5-8㎜)の周囲を泥質グラニュライトの粉末で覆い、3wt%の水とともに白金カプセルに封入して、8kbar, 900℃で100時間, 両岩石を反応させた。その結果、両岩石の境界部にコランダム(サファイア)やスピネル, フロゴパイト, 斜長石が形成されるのが確認された。 スリランカや南インド, マダガスカルなどの、かつて南極と連続していたと考えられているゴンドワナ大陸片には、高品位の宝石として重要なサファイアやスピネルが漂砂鉱床から産出するが、それらの鉱物がどのような岩石中で、どのように晶出するのかについては、不明な点が多かった。本研究によって、上記のゴンドワナ大陸片に多産するサファイアやスピネルが、ザクロ石-珪線石片麻岩とドロマイト質大理石の互層の相互作用を伴う部分融解反応によって形成されることが、世界で初めて明らかにされた。 上記の成果を公表する為に、2013年8月にイタリアのフィレンツェで開催されたGoldshmidt会議に, 11月に第4回極域科学シンポジウムに参加して、ポスター発表および口頭発表を行った。 また、2013年の10月9日から18日にかけて、スリランカのハイランド岩体に分布するザクロ石-珪線石片麻岩とドロマイト質大理石との互層の地質調査を行った。現在、ザクロ石-珪線石片麻岩中のザクロ石斑晶中に含まれる火山岩様包有物を多数発見し、地殻深部における部分融解現象と岩石の急速上昇過程に関する新たなモデルを構築中である(Hiroi et al., 2014)。
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