研究課題/領域番号 |
12J04875
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
引地 貴之 名古屋大学, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2013年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2012年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | 量子重力理論 / 因果力学的単体分割 |
研究概要 |
我々は因果力学的単体分割を用いた数値シミュレーションによる量子重力理論の研究を行っている。従来の因果力学的単体分割の数値シミュレーションでは、結果の解析が簡便になるという理由から時間方向に周期的境界条件を課してきた。このような周期的境界条件は一般の時空に於いては必ずしも成立しない。そのため、我々は因果力学的単体分割が誕生する以前から用いられてきた量子重力理論の離散格子模型であるユークリッド的力学的単体分割に於ける手法を応用し、3次元因果力学的単体分割に於いて時間方向に境界が存在する、より一般的な時空に適用可能な数値計算手法を開発した。我々は、このような数値計算手法を用い適切な境界条件を課すことで、因果力学的単体分割によるブラックホール時空の数値シミュレーションの実行することを目標としている。これにより解析的に困難であるブラックホールの蒸発現象の最終段階の計算が可能になると考えられる。また、我々はこの境界が存在する3次元因果力学的単体分割の数値シミュレーションに於いて、局所的な曲率の度数分布の期待値を測定し、それが古典論の一般相対性理論の予言する値とは異なることを示した。これは古典論には現れない局所的な、すなわちプランクスケールにおける量子重力特有の効果を記述している可能性が存在する。特に「広がった宇宙」と呼ばれる相における局所的な曲率の度数分布の期待値には幕的な振る舞いをする領域と指数関数的な振る舞いをする二つの領域が存在することが我々の数値シミュレーションから示唆されている。一方で、「非相関的時空」と呼ばれる相には指数関数的な振る舞いしか存在しない。「広がった宇宙」はユークリッド的ド・ジッター解に対応する相であり、その相にのみに現れる幕的な振る舞いは物理的に重要であると我々は考えている。現在この計算結果の解釈についての議論を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の研究計画は時空に境界が存在する場合のシミュレーションと時空のトポロジーを変化させた場合のシミュレーションの数値コード開発であるが、これらについては既に達成した。さらに時空に境界が存在する場合のシミュレーションにおいて、局所的な曲率の度数分布の測定には幕的な振る舞いをする領域が存在するという物理的に重要であると思われる新たな数値計算結果を得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の我々の研究計画はローレンツ的ド・ジッター時空の構築である。このような時空は加速膨張をするため宇宙論的には非常に重要な時空である。我々は量子宇宙論の議論から定まる適切な境界条件を因果力学的単体分割の数値計算に応用することで、ユークリッド的ド・ジッター時空からローレンツ的ド・ジッター時空に移り変わる時空の構築を目指している。また、「広がった宇宙」と呼ばれる相における局所的な曲率の度数分布の期待値の幕的な振る舞いの起源を探ることで、量子重力理論特有の時空構造を探る。幕的分布のように幾何学量がスケール不変になるということは他の量子重力理論へのアプローチからも示唆されており、それらとの関連を探る。
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