研究実績の概要 |
最終年である本年は以下のことを行った。 ①間期のヒメツリガネゴケにおける微小管生成は、枝分かれ、切断、細胞質からの生成の3種に分類された。切断はほとんど観察されなかったが、枝分かれ、細胞質からの微小管生成は同じくらいの頻度で観察され、枝分かれの角度も様々であった。これは、シロイヌナズナやタバコ培養細胞で知られている、40度の枝分かれが大部分であるという報告とは異なっている。この結果は細胞種によって主要な微小管生成機構が異なる可能性も示唆しており、大変興味深い。 ② これまでの知見から微小管の生成に関わることが予想される4因子(γ-tubulin, XMAP215, augmin, katanin)のRNAi株又はノックアウト株を作製した。取得した株を用いて微小管の再形成にかかる時間を測定したところ、γ-tubulinのRNAiにより微小管の生成が遅れた。そこで、内在性のすべてのγ-tubulinに蛍光タンパク質タグを付加した株を作製した。微小管再形成過程においてγ-tubulinは大部分の微小管生成起点と共局在したが、すべての微小管生成起点に局在するわけではなかった。さらに、通常培養の条件ではγ-tubulinをRNAiしても微小管生成頻度に顕著な差は認められなかった。 以上の結果は、ヒメツリガネゴケにはこれまで知られている既存の微小管依存的な機構とは異なる、γ-tubulin依存的な機構が存在し、中心的な役割を果たしている事を示唆してしているだけでなく、γ-tubulinに依存しない機構の存在も示唆している。これらの結果をまとめ、The Plant Cellに発表した。
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