研究概要 |
本研究では, バイオマス由来の糖アルコールから高分子原料として用いられるジオール生成のための触媒開発と反応機構の解明を目的とし実験を行った. 現在, ジオールの多くは石油由来の物質から合成されるため, バイオマス由来化合物からの合成は石油枯渇や地球温暖化を抑制することが出来る. さらに, 反応機構を解明することでグルコースやスクロースなどのさらに多くの水酸基を持つ糖の水素化分解反応にも応用可能となるため重要である. 本年度は, 環構造を持つ糖アルコールのモデル化合物である1,4-アンヒドロエリスリトール(1,4-AHERY)から一つのOH基を除去した3-ヒドロキシテトラヒドロフラン(3-HTHF)の生成を目指した. 結果として, WO_x-Pd/ZrO^2触媒を用い1,4-AHERYから3-HTHF収率74%(世界最高収率)を達成した. また, 反応後の触媒を再焼成することで再利用可能であることも見出した. さらに, 水素圧及び基質濃度依存, 様々な基質の適用性から, 本反応は1,4-AHERYの二つのOH基が触媒表面に吸着し, 部分的に還元されたWO_x種により一つのOH基が選択的に水素化分解されると考えられる. さらに, WO_x-Pd/ZrO_2触媒の活性点構造を明らかにするため, X線回折測定, 水素昇温還元測定, ラマン分光, 透過型電子顕微鏡測定などのキャラクタリゼーションを行い, 触媒のモデル構造について検討した. その結果, 担持量の増加とともにWO_xは孤立種と単層構造から多層構造へと変化していき5-10nmのPd粒子がWO_x種と相互作用したモデル構造を提案した. これらの研究の成果は学位論文としてChemSusChemに投稿中である.
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