研究実績の概要 |
キネシンは、微小管に対してさまざまな力を加えるモータータンパク質であり、細胞分裂期には必須の役割を担う。酵母や動物細胞では、分裂期に働くキネシンの欠損表現型、細胞内局在、分子活性を網羅的に明らかにすることで、細胞分裂装置のメカニクスについて多くの知見が得られている。一方、60を越えるキネシンを有する植物においては網羅的な機能・局在解析は皆無であり、分裂期に働くキネシンについても情報は断片的である。私は、ヒメツリガネゴケにおいて網羅的なYFPタギングとライブイメージングを行い、全78キネシンのうち43ものキネシンが分裂期にスピンドルや染色体、フラグモプラストに局在することを明らかにした。さらに、全キネシンに対するRNAiスクリーニングを行い、いくつかのキネシンについて分裂期表現型を見出した植物特有のキネシンサブファミリーであるKinesin-ARKのRNAi株では、染色体分配後に核が娘細胞の中央に配置されないという表現型が得られた。網羅的な局在、機能解析から、植物が独自にキネシン遺伝子を増やして分裂装置形成や染色体分配のさまざまな局面に利用していることが示唆された。 これら網羅的なRNAiスクリーニングの成果はMiki et al., “RNAi screening identifies the armadillo repeat-containing kinesins responsible for microtubule-dependent nuclear positioning in Physcomitrella patens” として、Plant & Cell Physiology誌に発表した。
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