研究課題/領域番号 |
12J05373
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武田 晃 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | NMR / 強磁性 / 金属絶縁体転移 / 巨大磁気抵抗効果 / 重い電子 / 高圧 |
研究概要 |
平成25年度、報告者は、以下にあげる二つの課題に取り組み、研究成果を、13に記述された通り、学会、論文発表という形でまとめた。 1. 高価数Cr酸化物の核磁気共鳴(NMR)法による研究 高価数のクロムイオンを含む酸化物は、クロムと酸素の強い軌道混成のために、強磁性や金属絶縁体転移といった特徴的な物性現象が現れる。本年度、報告者は、高価数のクロムを含む酸化物NaCr_2O_4とK_2Cr_8O_<16>のNMR法による物性研究を実施した。研究の結果、これらの酸化物のクロムの3d電子の間には、多軌道効果によって、強磁性的な相互作用と反強磁性的な相互作用が同時に働くことを明らかにした。さらに、NaCr_2O_4は、傾角反強磁性が実現し、傾いたスピンが作る強磁性成分を打ち消すように、磁区構造を形成することが明らかになった。この磁区構造は磁場印加によって消失し、反強磁性体としては珍しい巨大な磁気抵抗効果を引き起こす。また、K_2Cr_8O_<16>は、CrとOの軌道混成が、電子系の持つ一次元性の手助けをすることが明らかとなった。この結果は、高価数をとるCr酸化物が、幾何学的に特徴のある格子系を舞台に、興味深い物性を発現する可能性があることを示唆しており、今後、更なる物質開発の進展が期待される。 2. LiV_2O_4の圧力実験 LiV_2O_4に見られる重い電子的な挙動の起源を解明することを目指して、この物質の物性の圧力効果を調べた。従来の到達圧力(~5GPa)をはるかに上回る9.8GPaまでの圧力印加に成功し、絶縁体相における系の非磁性化を明らかにした。また、^<51>V核のNMR測定の結果、圧力の増加に伴い、反強磁性的なスピン揺らぎが強く抑制されることが明らかになった。これらの圧力効果は、常圧下における重い電子的振る舞いの起源に迫るうえで、重要な手がかりを与えることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2つの高価数Cr酸化物を比較することで、一連の系を統一的に理解するために必要となる、高価数遷移金属酸化物に特有の性質を見出した。また、圧力下実験においては、到達圧力、および、実験の成功確率が向上し、これまで、測定が困難とされてきた^<51>V核のNMR測定を実施し、磁気揺らぎに関する新たな知見を獲得した。
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今後の研究の推進方策 |
報告者は、LiV_2O_4の圧力実験を中心に、今後の研究展開を計画している。まず、磁気揺らぎの圧力依存性を明らかにするために必要となる^<51>V核の核スピン格子緩和率測定を行なう。次に、LiV_2O_4の局所亀子状態の圧力効果の解明を目指し、単結晶試料を用いた実験を行ない、ナイトシフトや核スピン格子緩和率の異方性を明らかにする。また、金属相を完全に抑制するためには、15GPa以上の圧力を印加する必要があるため、到達圧力を、さらに上げることを目指し、装置改良に取り組む。改良装置を利用して、非磁性絶縁体相の磁性をより詳しく調べる。また、圧力効果が期待される新物質が見つかり次第、新物質の物性研究を開始する予定である。
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