研究概要 |
本研究では, アブラナ科植物における抵抗性遺伝子の単離と, 抵抗性遺伝子の進化遺伝学的解析を目的に実験を行っている。萎黄病抵抗性遺伝子については, Brassica rapaの抵抗性と感受性を示す系統に対して, RNA-Seq法によって系統間で発現量が異なるNBS-LRR型遺伝子を探索した。その中で, 抵抗性系統にのみ存在するBra012688、Bra012689遺伝子から, 遺伝子マーカー(感受性系統では増幅されない)を作成し, 抵抗性・感受性系統の後代F_2分離集団に供試したところ, 各個体の遺伝子型と罹病度の間に強い関連性が示された。また, 感受性系統では, 両遺伝子の欠失により罹病化したと考えられた。これらの結果は, Bra012688, Bra012689が, B. rapaの有力な萎黄病抵抗性遺伝子であることを示唆している。なお, 2遺伝子は同じ転写方向でタンデムに位置するが, アミノ酸配列の相同性が低く最近の重複ではないと考えられた。B. oleraceaの抵抗性遺伝子については, 24年度に, キャベツ(B. oleracea)において, 抵抗性・感受性系統の後代F_2分離集団における組み換え個体を用いた接種試験により, 2つの有力なNBS-LRR型の萎黄病抵抗性候補遺伝子(FocBol-A, -B)を見出した。転写解析によって, 抵抗性系統でFocBol-Bは転写されるがORFが得られない, 一方でFocBol-AではORFが確保できた。また, 感受性系統では一塩基の挿入によりフレームシフトが起きており, FocBo1-Aの機能が喪失したと考えられた。更に, 抵抗性のFocBol-A特異的増幅マーカーによって多数のキャベツ, ブロッコリーF_1品種を用いたMAS (Marker Assisted Selection)を行ったところ, 抵抗性品種と感受性品種を完全に判別することができた。この結果は, FocBo1-Aが真の萎黄病抵抗性遺伝子であることを更に裏付け, 確実なMASの基盤を提供するものと考えられた。また, B. oleraceaのFocBol-Aは, B. rapaのBra012688のオルソログであった。全く異なる手法で同定された遺伝子が互いにオルソログであることは, これら2遺伝子が真の抵抗性遺伝子であることを強く示唆している。
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