研究概要 |
コンクリートの収縮によるひび割れは, セメントを結合材として使用する限り避けられないものである。コンクリートの収縮現象は, コンクリートが拘束されることにより引張応力を生じさせるため, 構造物にひび割れを発生させる原因となる。このようなコンクリートのひび割れは, 構造物の安全性, 使用性, 耐久性や美観に影響を及ぼすため, 構造物において有害なひび割れを防止することは, コンクリート構造物の長寿命化や高性能化の観点から重要である。 一方、コンクリートの体積変化は、初期材齢でコンクリートにひび割れなどを発生させるだけではなく、コンクリートの耐久性にも大きい影響を及ぼす。さらに、これはコンクリートの強度発現、弾性係数およびクリープ変形などの性質とも複雑に組み合ってコンクリートに影響を与える。コンクリートに発生するひび割れは、上記から挙げた様々な要因が互いに影響し、その経時変化の組み合わせの結果として発生する。このようなことから、コンクリートに発生するひび割れを予測するためには、材齢の進行に伴って逐次変化するコンクリートの諸現象を正確に把握し、評価した上で、各現象に対する相互依存性を考慮した予測手法が必要である。 そこで本研究では、ひび割れの低減方案として膨張材を適用する場合、収縮低減効果やひび割れ抑制効果を定量的に評価するため、膨張材を混和したコンクリートに対して微視的な観点から検討し、膨張材を混和したコンクリ一トの圧縮強度、弾性係数などの力学的特性モデル、収縮、膨張などの体積変化モデルおよびクリープ現象モデルなどの理論的なモデルを構築した。一方、それぞれの段階で目標を設定し、予測モデルについて検証を行い、各レベルで設定された目標を順次満足するように進め、最終的には、モデルによる膨張コンクリートの初期物性発現と、それに基づく応力の予測および予測した応力と引張強度の大小関係から、膨張材の収縮低減効果およびひび割れ抑制効果を統一的に説明できるマクロ予測手法を提案した。
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