研究実績の概要 |
1. 我々は前年度に、メタン生成アーキア由来のカロテノイド生合成酵素CrtIのホモログタンパク質を、ユニークな位置選択性を示す新奇プレニル基還元酵素として同定した。本年度はこの研究を論文1報に取りまとめ学術雑誌に掲載した [FEBS J. (2014) 281,3165]。また、本酵素の反応特異性に注目し、非天然型新奇化合物の創出への応用を試みた。本酵素と変異型フシコッカジエン合成酵素をゲラニルゲラニル二リン酸と順次反応させ、新奇構造をもった二環式ジテルペンの合成に成功した。 2. ドリコールは一部のアーキアに必須の糖キャリア脂質である。同化合物は直鎖状ポリプレノールの構造をもつが、水酸基に隣接するイソプレン単位が飽和している。我々は、アーキアにおいてこの部分飽和構造を生じる未同定の還元反応をCrtIホモログが担う可能性を考え、ドリコール生産菌である好熱好酸性アーキア由来のCrtIホモログについて機能解析を行った。組換えタンパク質を用いたin vitroアッセイ、および同タンパク質の異種発現宿主を用いたトレーサー実験を実施したが、目的の還元活性は検出されなかった。 3. Methanosarcina属やその近縁種のメタン生成アーキアが生産する2,6,10,15,19-ペンタメチルイコサン (PMI) は、地球化学の分野において脂質バイオマーカーとして有用である。しかし、PMI生合成に関する知見は一切ない。我々は、Methanosarcina属アーキアに特異的に保存されるcis-プレニル基転移酵素 (cPT) ホモログがPMI生合成に関わる可能性を考えた。この仮説を検証するため、組換えタンパク質を用いた機能解析および生成物の構造解析を行った。その結果、本酵素が通常のcPT活性に加え、ユニークなプレニル基転移反応を触媒する二機能性のプレニル基転移酵素であることが明らかになった。
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