研究課題/領域番号 |
12J05514
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
教育学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
羽山 裕子 京都大学, 大学院教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2013年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2012年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
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キーワード | Response to Intervention (RTI) / アメリカ合衆国 / 学習障害 / curriculum based measurement / Reading Recovery / early intervention / 特別支援教育 / Response to Intervention / alternative assessment |
研究概要 |
平成25年度の研究の柱は、①学校現場におけるRTI実践の各層で推奨されている指導方法を明らかにすること、②特に通常教育と特殊教育の連携が問われる第二層で積極的に用いられるリーディング・リカバリー・プログラムにおける指導方法を分析すること、③RTI実践の実態を詳細にとらえるために、渡米して資料収集、実践見学、インタビュー調査を行うことの三点であった。年度の前半においては、まずRTIの主張と、実践上で利用されている既存の指導方法の特徴との整合性の検討に取り組んだ。そこでは、リーディング・リカバリー・プログラムを具体例として取り上げ、同プログラムがRTI実践に利用される中で一部その性質を変容させている点を指摘し、RTIの無批判な受容が持つ危険性を示した(②に対応)。次に、RTIが実践されている現代アメリカ合衆国の状況を押さえること、とりわけそこでの障害のある児童・生徒への教育の特徴を押さえることを目指し、学力向上政策下で行われる州テストに障害のある児童・生徒がいかに組み込まれているのかを分析した。その結果、通常のテストとは異なる代替的(alternate)なテストが複数存在し、障害の種類や程度によって参加するテストが異なることを明らかにした。続いて年度の後半には、RTIにおいて用いられている読み書き能力の評価方法である、curriculum based measurement (CBM)に注目し、その1980年代以降の発展の様子を、各時期に開発された具体的な実践ツールに言及しながら明らかにした(①に対応)。そして年度末には国内での文献研究の成果をもとに、渡米調査を実施した。調査においては、オハイオ州立大学リーディング・リカバリー・プログラム研究者にインタビューを行った。その結果、リーディング・リカバリーの立場では、RTIの持つ学習障害観を肯定的にとらえていること、ただしCBMについては効果を疑問視していることが明らかになった(③に対応)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究では、研究目的2に関する成果を論文化し、また研究目的3についても渡米調査によって達成された。さらに、RTIの背景を理解する上で必要な、現代アメリカの特別支援教育と学力向上政策の関係について分析を行い学会発表および論文執筆を行った。また、RTI実践において用いられている評価ツールである、curriculum-based measurementについて、1980年代から現在に至るまでの発展過程を明らかにし、学会発表を行った。このように、当初の研究目的に加えて二つの新たな成果を上げている点で、今年度の研究は非常に順調に進展したと言える。ただし一方で、当初の研究目的1に関しては、リーディング・リカバリー以外の適当なプログラムを選択し分析するに至らなかった。この点では、当初の計画の一部が達成不十分であると言える。以上をふまえて、達成不十分な部分と予定以上の成果の両方が見られ、特に後者の割合が大きいことから、今年度の研究は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は平成24年度と平成25年度の二年間に渡って取り組まれてきた。その中で、現在のRTIの実践の姿を明らかにした。また、RTIの仕組みを作っていく際に直接的に参考にされた過去の研究成果や調査について検討を行い、RTIの理論的特徴の整理へとつなげた。一方で、平成24年度以前において筆者は、アメリカ合衆国の学習障害児教育に関する研究蓄積について整理を行い、代表的な立場とその関係性を解明してきた。そこで今後の研究の方向性としては、これら従来の学習障害児教育に関する代表的な立場と、現在のRTIに関する肯定派/否定派双方の論者との関連性を検討することを挙げたい。これによって、RTI研究をアメリカの学習障害研究全体の中に位置づけ、妥当性のある枠組みに基づいてRTIを分析し評価を下すことが可能になると考える。
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