研究の目的はCMB偏光観測POLARBEARで原始重力波によるBモードを検出し、その振幅を用いてインフレーションモデルを決定することである。 2012年度に入り、POLARBEAR実験は本格的にCMB観測を開始し、それに伴い、本研究では実験のデータを反映した最終的なBモードに対する感度を見積もるべく、解析パイプラインの開発を進めた。 研究計画において2012年度には実際の観測において人口較正源等を使用したキャリブレーションを予定していたが、最終的にBモードの振幅を決定するための解析ツールが完成していなかったため、パイプラインの開発とテストを行った。具体的には、POLARBEAR実験の共同研究者の開発したCMBパワースペクトル推定のプログラムXpureと、マルコフ連鎖モンテカルロによってパラメータ推定を行う公開プログラムCosmoMCのテストを実際の実験に即したシミュレーションにより行った。その結果、正しく宇宙論パラメータ推定ができないという結果を得た。どこに問題があるのか確認したところ、CosmosMCにおいて、パラメータ推定の元になる尤度関数の近似が十分ではなく、間違った推定が行われていることがわかった。その結果に従い、2012年度後半より、尤度関数のよりよい近似を求める研究を始めた。先行研究を調査することにより、いつくかの近似の手法があることが分かった。今後、それらがPOLARBEARに適用できるかどうかを調べる必要がある。 また、POLARBEARの観測では原始重力波による偏光だけではなく、重力レンズによる偏光も観測でき、ニュートリノの質量を決定できる可能性があり、その推定と、最適な観測領域の導出も並行して行った。
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