研究概要 |
梗塞後亜急性期以降活性化されて梗塞巣の拡大、非梗塞部位の線維化を介して心臓リモデリングに寄与している免疫細胞の検討を行い好中球やマクロファージから放出されるIL-23がγδT細胞からのIL-17の産生を誘導して心不全を増悪させることを報告した(JAHA2013)。 IL-17産生細胞は臓器や病態によってさまざまであるが、心筋梗塞後には90%以上γδT細胞からIL-17が分泌される。IL-17-KOマウスやTCRγδ-KOマウスでは、梗塞後2日目でMMP1,3,9, MCP-1, TNFα, IL-1β, IL-6の発現は野生型マウスと差がない。この結果は、IL-17産生性γδT細胞は梗塞早期の炎症、すなわち損傷治癒機転には影響を及ぼさないことを意味する。一方で、梗塞後7日目以降では、IL-17はCXCL1を介して好中球の浸潤を遷延化させ、 マクロファージに対しては、 向炎症性(M1)>損傷治癒(M2)へ傾かせ、線維芽細胞に対しては増殖、collagen産生を促進させ、 炎症の慢性化、臓器の破壊を促進させる方向に作用している。急性期の炎症反応(=損傷治癒機転)には影響を及ぼさず、 急性期を脱したあとの炎症の遷延化過程に深く関与するIL-17産生性γδT細胞は心筋梗塞後の心不全発症予防の治療標的として非常に有望である。心筋梗塞後の入院期間中にIL-17の作用を抑制する治療(IL-17を標的とするヒトモノクローナル抗体など)は心不全発症の予防薬として期待される。IL-17を標的とするヒトモノクローナル抗体(Secukinumab, vidofludimus)の慢性関節リウマチに対する第II相臨床試験成績が昨年の米国リウマチ学会で報告されており、 心不全治療領域でも有効性を証明する臨床研究を是非進めていきたい。
|