研究概要 |
本研究では, 我々人間がTVコマーシャルといった一般映像を視聴する状況をとりあげ, 人間の心的状態および映像・視線ダイナミクス間の構造的・確率的依存関係性を数理的にモデル化し, 視線運動の実環境計測に基づく心的状態の推定を行うことを目指している. 視線と視対象, 心理の関係性は古くより認知心理学分野などで研究されているが, そこで得られた知見の多くは人工的環境におけるものであり, 実環境における関係性のモデル化を目指す点に本研究の学術的意義がある. 提案モデルの独自性は, ダイナミクス間構造の表現法にある. 具体的にはまず, 映像・視線ダイナミクスを時区間ハイブリッドダイナミカルシステムとよばれる数理モデルを用いていくつかの要素的変化パターン(モード)により記述する. そして, 両ダイナミクス間の時空間的構造をモード同士の関係として簡潔に表現する. これにより, 映像や視線といった複雑なダイナミクス間の構造と集中状態との確率的依存関係を統計的に学習できるようになる. 本年度は, 映像・視線運動の大規模データセットを用いて, 両者の間の時空間的構造をあらかじめ統計的に学習しておくことにより, 新たに与えられた映像データにおいて注視されうる箇所を予測する手法(注視点予測)に関する研究を行った. 具体的には, 顕著領域の持つ要素的変化パターンと注視位置の間の時空間的構造を注視点予測のための特徴として積極的に利用するアプローチを提案し, 映像視聴状況において高精度の注視点予測が実現できることを確認した.
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