研究課題
特別研究員奨励費
平坦曲面のVeech群とは、平坦曲面上のアファイン写像を誘導する行列の成す群のことである。Veech群は上半平面に作用するフックス群であり、その商空間はリーマン面のモジュライ空間へ単射かつ正則局所等長に写像される。リーマン面からリーマン面のモジュライ空間への正則局所等長はタイヒミュラー曲線と呼ばれ、函数論や代数幾何学において重要な研究対象である。タイヒミュラー曲線の像は対応する平坦曲面のVeech群の商空間に一致する。各モジュライ空間にどのようなタイヒミュラー曲線が存在するかを解明するために、どのようなフックス群がVeech群として実現されるかを研究した。本年度はVeech群と通約的なフックス群がVeech群となるかを調べるために、平坦曲面の周期点の個数評価を行った。平坦曲面から周期点を除いて得られる平坦曲面のVeech群は元のVeech群と通約的となり, この二つのVeech群は共通の有限指数部分群を持つ。周期点の個数を評価することでこの有限指数部分群の個数を評価した。平坦曲面が非算術的なVeech曲面となる場合には周期点の個数は有限個であることは知られており、平坦曲面の幾何学的量に依存する値でその個数が評価されていた。昨年度与えた平坦曲面の幾何的量とVeech群の符号との関係を与える不等式を用いてこの個数評価を改良し、周期点の個数を平坦曲面の位相型とVeech群の符号のみに依存する量で評価した。更にこの周期点の個数評価から、非算術的Veech群の有限指数部分群から定まるリーマン面の正則族の正則切断の個数を評価した。昨年度はファイバーの位相型と底空間のリーマン面の位相型にのみ依存する量で正則切断の個数評価を与えたが、この量は対応するVeech群の部分群の指数に比例していた。周期点の個数評価により、ファイバーの位相型と元のVeech群の符号にのみ依存する量で上から評価した。
(抄録なし)
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Annales Academi æ Scientiarum Fennic æ Mathematica
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