研究課題/領域番号 |
12J05764
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
生物多様性・分類
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井手 竜也 九州大学, 比較社会文化研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2012 – 2013
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研究課題ステータス |
完了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2013年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 虫こぶ / 指標昆虫 / 世代交番 / 同居蜂 / DNAバーコーディング / 里山植物 / 分類学 / ナラタマバチ族 |
研究概要 |
虫こぶ形成昆虫として知られる日本産のナラタマバチ族(膜翅目 : タマバチ科)について、昨年度までに既知種の分類の見直しおよび未記載種の記載によって分類体系の基礎を確立した。これを軸に、国内各地での野外調査や得られた成虫を用いた野外飼育実験によって、各種の分布や生態についての情報を蓄積した。ナラタマバチ族は同種でも形態的特徴が異なる両性世代と単性世代をもっており、本族の分類を混乱させる要因となっている。飼育実験ではこれまで両性世代のみしか知られていなかったCycloneuro-terus属の単性世代成虫を初めて確認するに至っている(日本昆虫学会第73回大会、平成25年度日本昆虫学会九州支部大会にて口頭発表)。多くの種で両性世代と単性世代の対応付けがなされたことで、本族の種のより正確な分類や同定が可能になった。また、得られた成虫や幼虫、162サンプルからDNAの抽出し、ミトコンドリアDNAのCOI領域、cytb領域および核DNAの28SrRNA領域について、塩基配列の解析を進めた。これにより蓄積されたDNA情報は、これまで形態に関する専門的な知識を要したタマバチの種の同定や、厳密な飼育実験を要したタマバチの両性世代と単性世代の結び付けを行うための、新たな情報源として利用されることが期待できる。本研究は、日本国内のナラタマバチ族を明らかにするとともに、国内のタマバチ相との比較対象として重要なアジアの他の地域のタマバチの記載や(アメリカ昆虫学会誌107巻2号にて共著発表)、同じタマバチ科でありキイチゴ類に虫こぶを形成するクサタマバチ族1種の記載(アメリカ昆虫学会誌第106巻3号にて共著発表)、同じくタマバチ科で基本的に虫こぶを形成しないとされてきたヤドカリタマバチ族において発見された、虫こぶ形成を行う種の分子系統学的位置の推定(第58回日本応用動物昆虫学会大会にて口頭発表)等、タマバチ科全体を視野に入れた研究へも発展した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既知種の分類の見直しや未記載種の記載による分類体系の基礎の確立、野外採集や飼育実験による分布や生態情報の蓄積、塩基配列の解析によるDNA情報の蓄積がなされたことで、研究の目的はほぼ達成され、ナラタマバチ族の環境評価指標としての利用は大きく前進した。加えて、ヤドカリタマバチ族のようなナラタマパチ族との関わりが深いグループやアジアのタマバチ相も含めた研究へと発展していることから、おおむね順調であったと評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究によって既知種の見直しがなされ、多くの未記載種が明らかとなったが、ナラタマバチ族はまだまだ調査次第で多くの未記載種が発見される可能性が高いと考えられる。本研究で確立した分類体系の基礎を軸に、さらなる野外調査等によって、国内のタマバチ相の実態の把握に取り組む必要があると考えられる。また、ナラタマバチ族を環境評価指標として用いるうえで、実際の利用を想定した調査方法を確立するために、野外データの蓄積、解析方法の検討を行う必要がある必要がある。
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