研究概要 |
分化抑制因子Idは哺乳類では4種類(Id1, Id2, Id3, Id4)知られている。Idの種類によって、機能が異なる可能性を示唆するデータが蓄積してきている。実際、Id2欠損B細胞と, Id3欠損B細胞は、B細胞活性化状況が異なることを見いだし、それに起因すると思われる免疫反応の異常が認められる。それぞれのIdの作用機構を明らかにする目的にてB細胞を解析する。Id2-/-B細胞、Id3-/-B細胞と、コントロールB細胞をin vitroにて分化誘導し、遺伝子発現のプロファイリングを行った。その結果、Id2, Id3欠損により発現量に変化の見られる多数の遺伝子群が明らかになった。これらの遺伝子群はId2欠損とId3欠損では大きく異なることから、Idの機能的相違を反映する結果である可能性が考えられた。次に、Idの過剰発現によって変化する遺伝子群を調べることによって、直接転写を制御している対象遺伝子を絞り込むことを行った。このため、種々分化段階のB細胞株をもちいてinducible lineを樹立した。Id遺伝子の発現誘導によって、細胞の活性化状態等の変化を認めたが、Id2, Id3間で、発現に差のある遺伝子はあまり見つからず、差を認めた遺伝子もノックアウトB細胞から得られたデータと比較すると、直接のターゲットとは考えられなかった。この細胞株を用い、Id2, Id3それぞれの複合体を分離しその構成成分を調べたが、ここでも二つの複合体間に大きな違いを見いだす事は出来なかった。 しかし、これらの解析を進める過程で、形質細胞分化とクラススイッチ組換えを制御する新しいメカニズムが明らかになったため、これを投稿中である。
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