研究実績の概要 |
本年度は、申請者らが本研究課題において開発したNMR分子プローブ(J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 12398-12401)を生体内反応解析へ応用する目的で、プローブ分子の細胞特異的輸送技術の開発を行った。以下にその概要を記載する。 1、プローブ分子の生体内反応解析に向けた検討:開発したプローブ分子を用いた細胞選択的代謝解析のため、標的分子に特異的に結合する機能性核酸、核酸アプタマーに着目した。申請者らはこれまでに、細胞表層に存在するタンパク質を認識する核酸アプタマーを用いることで、モデルプローブ分子(蛍光色素)に標的細胞特異的な認識能力を付与することに成功した。一方で、生体環境での応用という観点から、親和性の向上が求められることが示唆された。そこで、機能性核酸の進化工学的手法である SELEX 法を適用することにより核酸アプタマーの親和性を向上することを試みた。その結果、従来の核酸アプタマーを上回る親和性を持つ核酸配列の特定に成功した。実際に、in vitro 試験および生細胞を用いた試験によって、本核酸アプタマーが機能することが確認されており、生体内での反応解析に向けた有望なターゲティング分子を得ることに成功した。 2、機能性核酸材料による細胞機能制御:申請者らは、本研究課題の進行に際し、前述の核酸アプタマーが標的タンパク質と結合することにより、標的タンパク質の活性を制御することを見出した。本アプタマーの標的タンパク質は、がん細胞の転移能の発現に重要な役割を果たすことが知られていたため、詳細な解析を行った。in vitro 試験および生細胞を用いた試験によって、本アプタマーががん細胞の遊走を制御することが見出され、がん治療の新たな分子プラットフォームとなり得ることが示された。
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