本年度はヘテロカプサに対して強い感染力を示すDNAウイルス(HcV)を研究材料とし、感染の進行に伴って発現様態が変化するmRNAと、感染に関わる機能的小分子RNAの単離・解析を目的としたスクリーニングを以下のとおり実施した。 1)感染時に特異的に発現が変化するmRNAの探索 HcV未感染、HcV感染後12および24時間後のヘテロカプサ細胞を用いてパイロシーケンシング法により、感染時に特異的に発現量が変化する遺伝子を推定した。その結果、感染後の細胞では複数のヘテロカプサ遺伝子の発現量がウイルス接種後に格段に減少すること、さらに感染前には検出されなかった大型2本鎖DNAウイルスのカプシドタンパク質遺伝子と相同な配列等が感染後に検出された点が注目された。本実験で感染前後に発現量の顕著な変動が検出されたmRNAがコードするタンパク質の由来・種類・機能を精査することで、HcVによる感染を受けたヘテロカプサ細胞内で進行する分子レベルのイベントの推定に向けたプラットフォームの構築に繋がると考えられる。 2)感染時に特異的に発現する機能的小分子RNAの探索 HcV未感染、HcV感染後12、24および48時間後のヘテロカプサ細胞を用いて、発現している22塩基程度の小分子RNAの塩基配列を決定した。各配列について、機能的小分子RNAであるmicroRNAが含まれる可能性を既知のmicroRNAデータベースとの照合により検討した。その結果、検出されたmicroRNA様配列のうち9種類の配列が既知のmicroRNAと相同性を示した。これらの候補配列の一部は、褐藻・緑色植物・ヘルペスウイルス等のmicroRNAコード領域と顕著な相同性を示し、また特徴的なステム・ループ構造を持つことから、ヘテロカプサ細胞内でのウイルス感染過程で発現調整等に係る何らかの機能を有している可能性が示唆された。
|